2014年05月20日

セルフプロデュース

こんにちは、カウンセリングサービスの河合一孝です。
例によってAKB48のお話から。

こうしてAKB48の話を書いていると、「河合さんはAKBで誰が好きなの?」としきりに聞かれることになります。
ところが、私の「推しメン(特に応援しているメンバー)」は一般にはほとんど知られていません。
名前を言ったところで、相手の方も、聞いたこともない名前が飛び出してくるわけですから、どう反応していいか困ってしまうこと必至。
「ふーん」の後に微妙な沈黙が訪れることでしょう。
その場で彼女の魅力を存分に語って彼女のことを世間に知らしめたいという誘惑に駆られもするのですが、そんなことをしてもまず引かれてしまうでしょうから、ぐっと我慢します。
ということで、「前回(2013年)の総選挙で57位だった子だよ、検索してみてね」などと、相手がその場で反応しなくてもいい回答をしてお茶を濁しておりました。

AKB48は姉妹グループを合わせて300人ほどのメンバーを抱えています。
それだけいたら、よっぽどディープなファンでもない限り、全員の顔と名前を一致させるのは難しく、AKB48ファンにすら覚えてもらえないメンバーもごろごろいるというのが実情です。
私もさすがにグループ全員の顔と名前を一致させられる境地には達しておりません。
AKB48ファンにしてそんな具合ですから、特にファンでもない一般の方にまで知られているメンバーといったらほんの極々一部です。

メンバーも、埋れていても仕方ないですし、アイドルなんですから、自分を知ってもらいたい、応援してもらいたい、と望んでいるはずです。
運営も一人一人を売り出そうといろいろと努力しているのでしょうが、限られた経営リソースの中でのこと、300人全員を均等に売り出すこともできませんので、限られた有望なメンバーから表に出していくしかありません。
ということは、メンバー自身もただ待っていたらダメで、ほとんどのメンバーは自分から積極的に動いていかなければ埋れていく一方だということになります。
ある意味、アイドルとしてのスタートラインにすら立てないのです。

実際のところ、それを実感できていないメンバーも多いのではないかな、と感じています。
AKB48に入ることができて、他のメンバーと一緒に努力していれば、華やかなステージに立つことはできますから。
コンサートなどを見に行けば、みんな頑張ってるなー、というのはひしひし感じます。
でも、みんなが本当に頑張っている場だからこそ、他のメンバーと同じように努力しているだけでは埋れてしまうんですよね。
(最近は必ずしもステージに立てるわけではないという仕組みに変わったので、危機感を覚えるメンバーは以前よりは増えたかと思いますが。)

危機感を覚えても、だからと言ってどうしたらいいかわからない、というところで悩んでいるメンバーも多いでしょう。

実は、このようなことは、AKB48の中だけの特殊なことではありません。
恋愛や婚活でも、同じように恋人や結婚相手を求めて頑張っている人はたくさんいますから、埋れてしまったら選んでもらえません。
仕事でも、同僚や競合他社も同じように必死に努力していますから、埋れてしまったら自分がそこで働いている意味を見失ってしまうでしょう。
結果を出すためには、自分自身を自分自身の手で売り出していかなければ始まりすらしないのです。

そういう状況の中で、ある一人のメンバーがどうやって自分を知ってもらおうと努力しているかを書いてみようと思います。

ここで取り上げるのは、市川美織さん。
このブログをお読みの方のほとんどが名前を聞いてもピンと来ないかとは思いますが、何を隠そう彼女こそが私の推しメンなのでございます。

AKB48は、東京・秋葉原にあるAKB48劇場で日替わりメンバーでほぼ毎日公演をしています。
公演では、その日に出演しているメンバーが一人ずつ自己紹介をするのですが、そこで名前の他にキャッチフレーズなどを言って自分をアピールします。
出身地や年齢、ニックネームなどを言うことが多いのですが、デビューして間もない頃から市川さんは、「フレッシュレモンになりたいの〜」という謎のキャッチフレーズ(振付け付き)を使い続けています。

芸能界の予備校とのコンセプトを持つAKB48プロジェクト、メンバーそれぞれに目標があります。
歌手になりたい、女優になりたい、モデルになりたい、などなど。
そんな中、彼女はフレッシュなレモンになりたい(レモンのような人ではなく果物の)と言い張りました。
かつて一世を風靡した「こりん星から来たゆうこりん」と同じ不思議ちゃん系天然キャラというキャラ付けの一種なのですが、それは、AKB48グループ随一の小柄な体格やほんわかした雰囲気とあいまって、強烈なインパクトをもたらしました。

その結果、AKB48グループ界隈での知名度は格段に上がりました。
AKB48グループのメンバーは全員公式にニックネームを持っています。
たかみな、こじはる、まゆゆ、などなど。
市川さんにもみおりんというニックネームがあるのですが、名前やニックネームよりも先に「フレッシュレモン」「レモンちゃん」と覚えられ、先輩などからもそう呼ばれるようになりました。
まずは自分の存在を知ってもらうことに成功したのです。

彼女は根っからの不思議ちゃんではありません。
本当はむしろ逆、とても真面目な女の子なんだと思います。
ずっと一緒に過ごしているメンバーも、ちょっと無理のあるキャラ付けだと思っているし、正直いちいち突っ込むのも面倒だったのかもしれません、そのうち「もう飽きた」「一発屋」「レモンだけじゃダメ」などと批判されることも増えました。
内輪での知名度は上がったものの、それ以上にはいまいちブレイクしない状態も続き、彼女は悩みます。
このまま続けていていいのだろうか、と。

おそらくレモンキャラは市川さん自身が感じている「本当の私」とは違います。
ですから、それを演じ続けるのはかなり疲れもするでしょう。
いまいちブレイクもしきれないし、批判までされてしまう。
だったらやめてしまった方がずっと楽です。

悩みながらも、結果的に彼女はこのキャラ付けをより徹底させる道を選ぶのですが。

実は、彼女のファンでもレモンキャラだからという理由で彼女を応援しているという人はあまりいないのではないかと思います。
というよりも、はっきり言ってしまえば、レモンキャラだけではファンは付かないでしょう。
レモンキャラはあくまで入口。
これをきっかけに彼女に注目し、彼女をより深く知っていくにつれ見えてくる彼女の人柄や振舞いやパフォーマンスなどに魅かれ、彼女を「一推し」に選んでいるのだと思うのです。

いつも真面目で一生懸命なところ。
アイドルに徹しようという姿勢。
ダイナミックでパワフルでシャープなダンス。
誠実で優しい人柄。
などなど。。。

レモンキャラの下に隠れたこの「本当の私」も、彼女が日々努力して磨き上げていったものです。
知ってもらい、興味を持ってもらい、選んでもらうための、彼女なりの工夫が詰まっています。

彼女がどんな努力と工夫をしてきたか、その一端を紹介すべく一度は具体的に書き連ねてみたのですが、ただでさえ長いこの文章がさらに倍くらいの長さになってしまったので、涙を飲んでばっさり削除。
ただ、そのくらいたくさんの努力と工夫を彼女はし続けました。

そうした日々の努力が認められ、昨年末あたりからバラエティ番組などに呼ばれることも増えてきました。
内輪では使い古されたレモンキャラですが、外ではまだまだ新鮮。
レモンキャラを活かしてそれなりに目立つことで、AKB48のファン以外の層に知ってもらえる機会も増えました。

私の周りでも、「NMB48の市川美織」は通じなくても、「AKBのレモンの子」と言えば「あー、あの子ね」とわかってもらえることが増えてきました。
もう「前回の総選挙で57位だった子を検索してね」などとお茶を濁さなくてもよくなってきたのです。

「レモンの上にも3年」
デビュー以来3年間、悩みながらも苦労を重ねながらも踏ん張って貫いてきた果実が、今ようやく実ろうとしています。

AKB48グループのリーダー的存在である高橋みなみさんは「努力は必ず報われる」と言います。

必ず報われるとは言えないんじゃないか、と思われる方も多いでしょう。
そう、確かに普通の努力ではなかなか報われません。
と言っても、それは、人並み以上にたくさんの努力をしなければならない、ということではありません。
自分自身が特別であるための努力が必要なんだ、ということなのです。

さらに言えば、特別であるための努力というのも、レモンキャラのような奇抜なことをしなければいけないわけでもありません。
市川さんにとってレモンキャラは一人でも多くの人に知ってもらうための入口。
まずはとにかく知ってもらえなければ何も始まりませんから、そのためには多少の無理もします。
そうして知ってもらって興味を持ってもらったら、そこでようやく日々磨き上げてきた個性を披露できて、それでやっと選んでもらえる。
彼女は、自分の個性を自信を持ってお勧めできるものに磨き上げていきます。
本当の勝負はそこでしているのだと思います。

同じ目標を目指すたくさんのライバルたちに埋もれずに自分を選んでもらうためには、人と違った何かキラリと光るものが必要です。

まず知ってもらい、さらに興味を持ってもらい、そして選んでもらう。
そのためには「あなたならでは」というものを見てもらわないといけないのです。

あなたの売りはなんでしょうか?

恋愛でも婚活でも仕事でも、これを作り磨いていくことが成功の第一歩なのかもしれません。


最後に。

私、AKB48グループと直接の関係は一切なく、ただの一ファンにすぎませんので、実情がどうなのかなどまったく知りません。
ただファンの立場から知りうることだけを元にこの記事を書いていますので、そういうものだと思って読んでいただけたら幸いです。

では、失礼いたします。


cs_kawai at 00:52心理学  この記事をクリップ!
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